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賃貸借契約解約時の償却について

賃貸借契約解約時の償却について

 

償却とは

償却とは、入居していた賃貸物件の退去時に、契約時に預けていた敷金や保証金の中から文字通り償却されてしまう戻ってこない金銭のことをいいます。 

 

ちなみに企業会計の際の「減価償却」とは直接的には無関係な言葉になります。

 

償却の金額や割合は「解約償却 賃料の1カ月分」とか「保証金からの償却年3%」とか物件や契約ごとに相違してきます。

 

事務所や店舗など事業用物件の賃貸時にかかってくることが多い償却金なのですが、住居用でも1カ月ほどの償却金が発生するケースはあります。

 

例えば契約時に家賃10万円のお部屋の敷金2カ月分を預けていた場合、償却金が家賃1カ月分の場合は、返金額は20万円-10万円=10万円となります。

 

償却はなぜあるのか? その使われ方は?

では、そもそもなぜ償却金というものがあるのでしょうか?

 

礼金同様に古くからの住取引の習慣、慣習が今も残っているという説もありますが、実は明確な理由はありません。

 

ちなみに礼金とは部屋を貸してくれた大家さんに対して、お礼の気持ちを込めて契約時にお渡しするお金です。

住宅事情が乏しかった戦後の時代の名残りのようなシステムなのですが、渡すタイミングこそ違いますが償却金も貸主が強い立場にあった当時に同様な状況下において生じたものなのかもしれません。

 

そしてこの償却金ですが、どのような使われ方がされているのか気がかりなところですが、一般的には、退去までに使用された室内の原状回復費用に充当されることが多くなっています。

 

償却に関わるトラブル

いずれにしても償却金とは借主の負担であることには代わりがなく、借主からすると不満材料であることは察することが出来ます。

 

敷金というもの自体が、家賃が払われない場合の担保のようなものですし、借主の故意、過失によって生じてしまった傷や破損、汚れなどが生じれここから精算されることには異論は無いと思います。

 

ただ、加えて償却金があることまでは払いすぎではないのか、という疑問も出てきます。

 

原状回復費用に充当されることが多いとはいえ、償却金2カ月分だった場合に実際は前述の費用が1カ月分もかからなかったとしても、その差額が戻ってくることはありません。

 

しかも契約によっては、償却金に加え、礼金・ハウスクリーニング費用・原状回復費用までもが借主負担になっている契約もあります。

 

そのため以前には裁判も起こっています。

ただ、その際の判例では

「償却分相当額は建物または付属備品等の損耗その他の価値減に対する補償としての性質を有するものと解する」との裁判例があり、(東京地判平成4年7月23日)

その損耗その他の価値減に対する補償の範囲には、いわゆる通常損耗等すなわち借主が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗を含む(最判平成23年3月24日)と解されています。

 

したがって、その特約において当事者が特段の定めをしていない場合には、借主の故意・過失によって生じた汚損・破損等の補修費用については、その償却分の中には含まれていないと解されます。(公益財団法人不動産流通推進センターより引用)

償却金と原状回復費用とは別扱いという認識という事になります。

 

契約時の心構え

人気のある物件は競合も多く、条件交渉の際にはどうしても貸主側優位になってしまうことは否めませんが、入居するときには新居・移転先での期待から興奮状態になっていますので細かい契約条項を見落としがちになりがちになります。

 

退去の時にどのくらいの費用がかかってくるのかは経営的な視点からしっかりと最初の契約時またはそれ以前の段階から不動産会社を通して確認をしておくことをお薦めいたしますし、必要だと思います。

 

納得いく契約になるようにあらかじめ心構えをしておきましょう。


 

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